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物流業界の2024年問題と、着荷主側で急がれる自動化対応

By 協働ロボット.com 運営担当

協働ロボット.com 運営担当です。

現代の製造業・物流業界は、人手不足という深刻な問題に直面しています。今後は生産年齢人口の減少や物流業界の2024年問題による労働時間の上限制限などが、経営そのものにも大きな影響を及ぼすと予想されています。このような状況を解決するために、自動化が重要な鍵を握っています。

本記事では、ロボットSIer(システムインテグレータ)の立場から、自動化の有効な手段である無人フォークリフト(AGF)とAMRによるパレット搬送について、AGFAMRの違いをはじめ、それぞれがどのような現場への導入が適しているのか、事例を交えながら解説いたします。

皆様の課題解決のヒントになりましたら幸いです。


物流業界の2024年問題と、着荷主側で急がれる自動化対応_メイン画像

人手による運搬作業の課題

データで見る、人手不足の現状と未来

皆様もご存知の通り、製造業・物流業の人手不足は慢性的です。

今後、少子高齢化が進むことにより、15〜64歳の生産年齢人口の減少がさらに加速することが想定されています。

構内物流のパレット搬送自動化のメリットと進化するテクノロジー_スライド6

 

物流の2024年問題とは

また直近では、物流の2024年問題が人手不足をさらに加速させる要因のひとつとして取り沙汰されています。

物流の2024年問題とは、長時間労働の改善を目的に、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることで発生する問題の総称です。

この制限により、物流業は、ドライバーの人数が不足したり、1台のトラックを長時間動かすことで成立してきた従来の輸送ルートを維持できなくなることが予想されています。

また、モノの流通とは切っては切り離せない製造業も、この上限規制により影響が出ることが懸念されています。

最悪の事態として、材料の入荷が滞り、工場の稼働を止めなければならない状況にもなりかねません。

さらに、物流のリードタイムが延びることにより、納品を間に合わせるため、実質的な製造リードタイム短縮を迫られ、従業員への負担が増す可能性もあります。

 

物流の2024年問題が倉庫内作業に与える影響

物流の2024年問題はフォークリフトオペレーターにも影響を及ぼします。

現在は、荷を届けたドライバーが、荷主側の事情によりバラ荷を手荷役で積み卸ろしする、あるいは荷主側のフォークリフトを使いパレット荷物を積み卸しすることが多くありますが、20244月以降はこうした荷役作業をドライバーが行うことは、上限時間規制により難しくなる可能性があります。

そのため、これまで手荷役だった荷物も、効率化のためパレット荷役へ移行せざるを得ません。

さらに、パレット荷役もドライバーではなく荷主側のオペレーターによって行うことが増えていくことが想定されます。

しかし、熟練のフォークリフトオペレーターが不足している現状では、このような変化に対応することも難しい状況です。

そのため今後は、女性や高齢者、外国人などの、これまでフォークリフトオペレーターとして働く機会が少なかった層の雇用や、AGF(無人フォークリフト)などによるパレット搬送の自動化が検討されていくことになる、と日本産業車両協会は分析しています。

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課題解決の重要な鍵を握る、パレット搬送自動化とは

それではパレット搬送の自動化は、どのように考えればよいでしょうか。パレット搬送の自動化手段は、主に2つあると私たちは考えています。

 

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パレット搬送の自動化(1) ー無人フォークリフト

ひとつは、無人フォークリフトによる自動化です。

Automated Guided Forkliftを略して「AGF」と総称されています。

AGFは、コンピュータ制御により無人搬送するフォークリフトのことで、自動フォークリフトとも呼ばれます。

AGVAutomated Guided Vehicleに分類される誘導体有りタイプが現状は主流で、製品保管・入出庫、出荷荷揃え、積み下ろしなどの自動化で活躍しています。

 ※AGVとはAutomated Guided Vehicleのことで、日本語では自動搬送台車、無人搬送台車と呼ばれ、走行する際は経路を示す磁気テープや、反射板や、QRコードなどの誘導体に沿って移動します。言うなれば、電車のようなもので、指定された経路内しか移動することができず、経路上に障害物がある場合、停止するしかありません。

AGFがどのような現場で使用されているかご紹介いたします。

こちらの動画は、三菱ロジネクスト株式会社製AGFの導入事例です。

入荷された荷物を有人フォークで仮置きした後、レーザー誘導方式のAGFにより、入庫先の倉庫ラックへパレットを自動搬送しています。

 

ご覧のように、AGFはパレットの上下移動の自動化が必要な場所、倉庫ラックへのパレットの積み下ろしで活躍しています。

フォークの上下時に人が接近してしまうと危険なため、人と隔離できる環境での運用が推奨されています。

主流のAGVタイプは、誘導体が設置されている範囲でしか動けないため、同じ場所に繰り返し積み下ろしする定型作業に向いています。

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パレット搬送の自動化(2)ーAMR

もうひとつは、AMRによる自動化です。

AMRAutonomous Mobile Robotの略語で、日本語では、自律走行搬送ロボット、モバイルロボットと呼ばれています。

予め作成したマップ情報と、搭載されたセンサーから得た周囲情報で自己位置を推定するため、磁気テープなどの誘導体が必要ありません

周囲の環境に合わせて自動算出したルートを走行するため、走行ルート上に人や障害物がある場合でも、回避して走行が可能です。そのため、自分で考えて移動するロボットと言えます。

AMRは、主に工程間搬送、製品保管・倉庫への入出庫の自動化で活躍しています。

パレット搬送の場合は、上部にリフトアップ機構やコンベヤを取り付けた大型の高可搬タイプが主に使用されています。

 

では、AMRがどのような現場で活用されているのかご紹介いたします。

こちらの動画は、Mobile Industrial Robots社製AMRを導入した中国の製薬会社の事例です。

これまでは、有人フォークリフトを使用して、梱包材を載せたパレットをトラックの積み下ろしエリアから倉庫に輸送していました。

トラックヤードから倉庫までのルートは、何回かの右左折を経て約100メートル。

従業員も使用する通路だったため、危険なシーンも発生していました。

こうした場所にパレット搬送用のAMRを複数台導入したことで、有人フォークリフトの作業量を減らすだけでなく、現場の安全性の向上に貢献しています。

 

AMRが適した現場の特長についてご紹介いたします。

パレットの水平移動の自動化、例えば物流エリアや自動倉庫と生産・仕分けエリア間の搬送、製造業における生産エリア-生産エリア間の搬送などで活躍します。

AMRには、安全に走行するための機器が搭載されているため、人との協働空間で運用が可能です。

自動でルートを算出するため、搬送先が頻繁に変更になる現場や、人の行き来が多い動的な現場に向いています。

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無人搬送車の安全

最後に、AGFAMRといった製品を導入する際、必ず考慮しなければならない安全についてご説明いたします。

AGVAMRといった無人搬送車や、それらを使用したシステムに関する安全要求事項などをまとめた規格として、「ISO3691-4」があります。

この規格は、JIS D 6802-2022としてJIS化もされています。

これらの規格に基づいて、安全機能が搭載されているAGF・AMRメーカーの製品を選ぶことが重要になります。

しかし、AGFAMRを運用する際、単に製品の安全機能だけに頼り切ることはできません。

通路幅や、設備との連携など、ケースバイケースでシステム全体の安全性を考える必要があります。

そのため、きちんと安全について知識があり、システム全体のリスクアセスメントが実施できるシステムインテグレータに相談することが重要になります。

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まとめ

「物流業界の2024年問題と着荷主側で急がれるパレット搬送による自動化」、いかがでしたでしょうか。

ここまでご説明してきたように、パレット搬送の自動化には主にAGFAMRという2つの手段があり、現場の状況や作業用途によって適した製品を選ぶことが重要です。

・パレットの積み下ろしが必要な現場で、人と隔離できるならAGF
・パレットの水平移動が必要な現場で、人と協働する場合はAMR

まずは以上の観点からご判断頂ければ、検討の入り口としては間違いありません。

ここ最近では、誘導体が不要なAMRタイプのAGFや、フォーク上下幅が狭めのパレットの水平移動専用のAGFも登場しています。フォークの上下という動作は必ず発生すること、フォーク部分の形状が危険であることに変わりはないため、人との協働空間における使用には注意が必要です。

また、最後にご説明した通り、安全についても十分考慮する必要があります。

慢性的な人手不足はこの先も続いていくことは間違いありません。そろそろ人手だけに頼らない自動化の推進が求められています。ご検討の中で、お困りごとやお悩みがありましたら、当社にお気軽にご相談ください。

AMR活用による工場内搬送業務自動化ガイドブックDLはこちら>

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