これまでの産業ロボットは、自動車や機械製造など、比較的大きな製造ラインで柵で囲い、安全を確保するため人の作業と分離した状況で固定的に使われてきました。そのため繰り返しの単純作業には向いていても、状況に応じて変種変量に柔軟に対応する必要がある食品製造業などの現場には不向きでした。
しかし技術革新とともにロボットの小型化が図られ、また法規制の緩和により、柵なしでの人とロボットの共同作業が可能となり、産業ロボットのジャンルの中で、人との共同作業を前提とした新たなロボットが続々と誕生してきました。これが「協働ロボット」です。
小型化、軽量化、ティーチングの容易さなど、協働ロボットの特性による相乗効果により、価格のハードルが下がり、中小製造業においても活用の可能性が一気に広がったのです。
以下に「協働ロボット」導入が加速する理由をさらに詳しくまとめてみました。
1.80W規制の緩和
従来、国内の規制においては、80W以上のロボットは柵で囲い人間の作業スペースから隔離することが必須でした。しかし、2013年12月の規制緩和により、「ロボットメーカー、ユ ーザーが国際標準化機構(ISO)の定める産業用ロボットの規格に準じた措置を講じる」等の条件を満たせば、80W以上の産業用ロボットでも人と同じ作業スペースで、働くことが可能となったのです。
これにより、従来は柵の設置やスペースの確保などでロボットの活用に掛かっていた大きな手間や負担、コストなどを軽減でき、より省スペースでフレキシブルな生産ラインを実現できるようになりました。
2.安全性技術の進化
規制緩和とも関連しますが、ISOで協働ロボットのリスク評価手法が整備されてきたことと同調し、ロボットメーカー各社がその要求に応えられるよう技術を向上させてきたことにより、人とロボットの協働作業に求められる安全性の確保が容易に実現できるようになりました。
3.プログラミングやインテグレーションの容易さ
そもそも産業用ロボットは「半完結製品」で、「生産機械」として考えた場合、そのままただ動くだけでは製品と呼べません。ハンド が取り付けられ、プログラムが組まれ、センサーや周辺機器が取り付けられ、最終的には 何らかの生産システムに組み込まれて初めて価値が確定します。
そのため、用途や目的を実現す るためには、ハンドなどの新たなハードウェアを組み合わせ、これらが機能するようにソフトウェアをプログラムするインテグレーションの作業が発生します。
従来、生産ラインを組み替えるたびに新たなハードウェアを開発し、プログラミングを行わなければならなかったため、大きな負担が発生、ここに産業用ロボット利用の大きな障壁があったわけですが、さまざまな技術革新により、作業のプログラミングや製造ラインへのインテグレーションの手間や負担を軽減され、 実装期間の短縮や効率化を実現できるようになったのです。