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今だから考えたい「協働ロボットと安全」 第3回:ロボットシステム安全化の考え方

By 協働ロボット.com 運営担当

 

協働ロボットBLOG、「協働ロボットと安全」を担当する鈴木です。今回は、第3回:ロボットシステム安全化の考え方について、ご紹介します。

 

第3回:ロボットシステム安全化の考え方

 

第1回で、人とロボットの協働作業を可能とする設備とするためには「協調安全」という概念が必要であると述べました。それでは、その「協調安全」を実現するためには何が必要なのでしょうか。

 

まずは当たり前ですが、協働ロボットが必要であり、次にその機能を活かすインテグレーション能力が求められます。


今回は、インテグレーションの前提となる、ロボットの安全性要求についてです。

 Safety First written on the road.jpeg

ロボットの安全性要求には、次の3つの国際規格が存在します。

 

・ISO 10218-1:2011

・ISO 10218-2:2011

・ISO/TS 15066:2016

 

ISO 10218-1はロボット単体であり、ISO 10218-2はロボットシステムに関する内容です。これらの規格では初版発行当初から協働運転、協働作業空間について触れられています。

また2016年に発行されたISO/TS 15066では、協働ロボットシステムとその作業環境の安全要求に関して前述の2つの規格を補完するものであると定義づけられています。

 

まず、ISO 10218-1において、協働ロボットに関する以下の4つの安全機能が述べられています。

 

(1)安全適合の監視停止の機能要求

(2)ハンドガイドの機能要求

(3)速度および間隔の監視

(4)本質的設計または制御による動力および力の制限


(1)安全適合の監視停止の機能要求

・人が協働作業空間内に存在するときは、ロボットは停止しなければならない

・停止機能は、PL=d(カテゴリ3)またはSIL2(ハードウエアフォールトトレランス1)で停止カテゴリ0または1であること。たとえば、IEC61800-5-2で規定しているSOS(Safe Operation Stop)であれば、停止カテゴリ2としてもよい。

・人が協働作業空間を離れた後、ロボットは自動運転に復帰してよい。

 

基本的にロボットは、人が協働作業空間内に存在しない場合にのみ協働作業空間での作業を可能とし、人が協働作業空間に侵入する場合は保護停止しなければなりません。
しかし、安全適合監視停止を使用した協働ロボットであれば、協働作業空間にロボットが存在しても人の協働作業空間での作業が許可され、人が協働作業空間から離れた後にロボットは自動起動できるシステムとすることができます。

この機能を利用することで、人はロボットの再起動を意識せずに協働作業空間でスムーズな作業が実現できるのです。

 

このとき協働作業空間での人の存在検知をするための機能が必要になります。(2)ハンドガイドの機能要求です。

 

(2)ハンドガイドの機能要求

・ハンドガイド装置がある場合、エンドエフェクタの近くに配置し、非常停止装置とイネーブル装置を備えなければならない。

・ロボットは安全適合監視速度機能が有効な状態で運転しなければならない。

・安全適合の監視された速度制限は、リスクアセスメントによって決定しなければならない。

 

主に、協働ロボットを重量物の搬送などの作業補助に使用する場合にこの機能を使用します。この機能では、人とロボットが接触しての協働作業となります。そのため、人からの起動の意志と緊急時の停止をロボットに伝えるための装置や、安全な移動速度をリスクアセスメントに基づいて決めなければなりません。このとき、参考としてISO 10218-1では、教示作業中のロボットの移動速度は250mm/sを超えてはならないと要求されています。また、安全適合の監視された速度監視が必要となります。(3)速度および間隔の監視です。

 

(3)速度および間隔の監視

・ロボットは、決められた速度およびオペレーションとの間隔を保たなければならない。

・この機能は、ロボットに組み込まれた複数の機能または外部入力の組合せで達成してもよい。

・決められた速度または間隔の維持の不具合(障害)が検出されたときは、保護停止にならなければならない。

・速度および制御の監視機能は PL=d(カテゴリ3)または SIL2(ハードウエアフォールトトレランス1)で停止カテゴリ0または1であること。

・オペレータとロボットとの相対速度は、最小安全隔離距離を計算するときに考慮する必要がある

 

この機能によって、人とロボットの距離が近くなれば危険状態となるのでロボットを低速に、十分な距離がとれれば高速に自動変更することが可能となり、作業の連続性が高まります。協働ロボットの制限可動域からの最小安全隔離距離の絶対位置であれば、リスクアセスメントとISO 13855に基づく安全距離計算によって決定可能です。

 

(4)本質的設計または制御による動力および力の制限

・ロボットの動力または力を制限する機能はPL=d(カテゴリ3)または SIL2(ハードウエアフォールトトレランス1)で停止カテゴリ0または1であること。

・いずれの制限値を超えた場合も保護停止としなければならない。

 

ロボットと人との接触に関しては賛否両論ありますが、ロボットの力を制限し接触時のリスクを低減もしくは受入可能な状態にするこの機能は、協働作業空間での人とロボットの共存を可能とします。

ISO/TS 15066 ANNEX A 表 A.1には生物力学的限界値が参考に示され、人に影響が出る接触限界値を人の部位ごとに示しています。

 

これらの機能を実現したロボットが協働ロボットということになります。

 

しかし、協働ロボットだけでは目的機能は実現できません。アプリケーションとしてのシステム構築をしてはじめて形を見せるのです。ここからがシステムインテグレータ(以下、SIer)の役割となります。
SIerには、協働ロボットの特性を理解し、その機能を十分に活かした、生産性と安全性が両立された設備を構築することが求められます。このようにSIerの役割は重要なのです。

 

たとえば、ロボットハンドは目的によって多種多様であるため、協働ロボットの仕様には含まれません。SIerは、ロボットハンド部の機能や形状を安全面からも検討しなければならないのです。

 

次回は、協働ロボットのアプリケーション構築に必要な安全機器を紹介します。

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