セーフティリードアセッサ岡田の安全コラム

2025年2月に発表された産業用ロボットに関する国際規格「ISO10218」改定。はたして何が変わったのか?

作成者: セーフティ推進部 岡田和也|2025年03月20日

セーフティリードアセッサの岡田です。
すでにご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、2025年2月に産業用ロボット・産業用ロボットシステムの安全に関する国際規格「ISO10218-1/-2」が改定されました。改定を受けて、当社のお客様からも少しずつ問い合わせが入るようになってきています。

今回の改定では構成が変更され用語や要求内容が追加・変更されています。特に協働ロボットの導入に関わる方には知っておいて頂きたい点がありますので、今回の安全コラムでは、どのような改定が行われたのか、ざっくりと改定の要点を抽出して、まずは緊急速報としてお知らせする次第です。

国際規格ISO 10218

ISO 10218-1/-2は、国際標準化機構(ISO)が定めた産業用ロボットの安全に関する国際規格です。パート1では産業用ロボット本体の安全に関する要求、パート2ではロボットシステムの安全に関する要求がまとめられています。

知っておきたい「ISO10218-1/-2:2025」改定のポイント

今回(2025年2月)の改定の主な内容を9つのポイントに整理しました。
私の主観でピックアップしております。規格の条文にある主な変更点とは異なりますのでご注意ください。

  • 1.ISO/TS 15066との統合

    産業用協働ロボットシステムとその作業環境の安全要求事項に関する技術仕様書であるISO/TS 15066がISO 10218に統合されました。これにより、産業用ロボットと協働ロボット(コボット)の安全基準を一貫して管理できるようになり、規格適用がシンプルになりました。

  • 2.用語の変更

    ISO10218-1とISO10218-2で使用されていた用語が統合され整理されました。例えば、これまで安全適合監視というように使われていた安全適合(Safety-rated)という用語は、今回の改定で使用されなくなっています。ちなみに、協働ロボットという用語自体も使われていません。少しショックな話ですので、今後の動向を注視していきたいところです。

  • 3.ロボットのクラス区分の新規追加

    可搬重量、速度などを基準に、軽量小パワーのロボットとそれ以外という二つのクラスにロボットが区分されるようになりました。クラス1とクラス2では、要求される安全機能が異なります。
    今までは、高可搬の比較的大型の協働ロボットも、卓上サイズの小型の協働ロボットも同じ安全機能の要求が適用されていました。一括りにしてしまうのはやや大雑把に感じる部分もありましたので、現実に合わせた変更だと感じています。

  • 4.エンドエフェクタの安全要求の追加

    これまで軽くしか触れられていなかったエンドエフェクタへの安全要求について、形状をはじめ、具体的な要求が今回の改訂の中に組み込まれました。協働ロボットをシステムとして運用する際、エンドエフェクタは欠かせないため、この部分はぜひご一読いただきたいと思っています。

  • 5.安全関連制御システムの要求内容の変更

    安全関連制御システムの要求内容が変わりました。今まで2つしかなかった選択肢が3つに増えています。

  • 6.安全機能の一覧の追加

    安全機能の一覧ができました。安全機能の種類の増加や、パフォーマンスレベルなどの要求が機能ごとに定められ、より細かくなっています。

  • 7.サイバーセキュリティの要求の記載の新規追加

    サイバーセキュリティの要求の記載が新たに追加されました。スマートファクトリー化が推進されていく世の流れの中では、産業用ロボット・協働ロボットも例外ではありません。オンラインになった時点で、外部から干渉される可能性はゼロにはなり得ないため、セキュリティの強化はもちろん、検知などの方法で対策を行う必要があります。

  • 8.衝突試験に関する内容の新規追加(付属書による参考)

    今までなかった衝突試験についての内容が付属書に追加されました。
    これまでは参考にできる情報が少なかったため、この追加により試験を実施しやすくなると思われますが、実際に試験をするにはそれでもまだ情報が少ないように思います。

  • 9.生物力学的限界について

    生物力学的限界の表も本規格に統合されました。内容や数値に大きな変更はありません。今後もこの表に記載されている数字を活用していくことになると思います。

以上となります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

前述のとおり、今回の改定では対応に大きな変更を求められるような本質的な変更はないように見受けられます。また、改定によって規格の内容が整理され読みやすくなっています。しかしながら、改定の内容が規格全体の中のいろいろな箇所に散りばめられていますので、お客様にとっては、あらためて一つひとつ拾い集めていくような細かい手間が必要となりそうです。

実際に、今回の改訂を受けて具体的にどのような作業が必要になるのかは、お客様の構築するシステムに応じて異なりますので、もし不安をお抱えでしたら当社の安全コンサルティングをご活用、もしくは、こちらからお気軽にご相談頂ければ幸いです。

ISO10218の改定につきまして緊急速報としてお知らせいたしました。引き続き情報提供に努めてまいりますので、よろしくお願いします。

執筆者:
IDECファクトリーソリューションズ株式会社 セーフティ推進室 室長 岡田 和也
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